空気集熱ソーラーの制御盤(とりわけ、TC-10)について、シンケン社内、とくに週3行にて様々な意見や考察が出ていることを知り、これまでの制御盤の開発者として、今の制御盤について説明してみたいと思います。
なぜ、季節モード(冬・春秋・夏)という設定ボタンがあるのか?
最初に、「なぜ、季節モード(冬・春秋・夏)という設定ボタンがあるのか?」、どうして「季節モード」という名称なのか?について、説明します。
3つの理由があります。
1.空気集熱ソーラーはパッシブデザインに基づくシステムだから。
2.電話でサポートできるように名称を固有のものにするため
3.過去使われていた制御盤の流れを継承しているため。
1.空気集熱ソーラーはパッシブデザインに基づくシステムだから。
空気集熱ソーラーが、ほかの冷暖房機器と異なる大きな特徴は、パッシブデザインに基づいたシステムであるということです。
パッシブデザインとは、パッシブ=受動的なという言葉のとおり、自然環境が自分たちが受け入れやすい状態に変化したときに、それを受け入れ、受け入れ難いときには、外部を閉じる自然の生命体の行動原理を建築に応用したものです。
そのため、私達が決定するのは、「取入運転」や「排気運転」といった、機械の動作そのものではなく、「この条件のときはこう動き、そうでないときにはこう動く」といった、条件指定した複合動作のパターンになります。
具体的には、
冬モード・・・・主に棟温度が一定以上に達したら、取入運転を行い、棟温度が下がったら、運転停止になる 動作パターン
春・秋モード・・棟温度と室温の条件に応じて、取入運転・排気運転・運転停止となる動作パターン
梅雨モード・・・ 日中と夜間に応じて、排気運転と運転停止を入れ替える動作パターン
夏モード・・・ 日中と夜間に応じて、排気運転と涼風取入運転を入れ替える動作パターン
という、条件に応じて複合した動作パターンについて、住まい手に選択をさせています。
エアコンのような冷暖房機器のことを、パッシブとの対比で、アクティブ(システム)と形容します。「積極的・能動的」と訳されますが、自然の動きとは関係なく、スイッチを押せば「冷房」「暖房」の空気を吹き出すことが可能です。
モードを運転停止を除いた動作パターンの羅列の名称で呼ぶと、
冬モード・・・ 取入モード
春秋モード・・・ 取入・排気モード
(梅雨モード)・・・排気モード
夏モード ・・・ 排気・涼風モード
となります。→ → → 区別つきにくすぎるから別の名前をつけよう → → → これ切り替えるのは季節毎だから季節ごとの名前でいいのではないか → → → 季節モード となっています。
2.名称を固有のものにするため
1において、動作を名称に使わないということとも一部かぶりますが、制御盤上で同一の名称が、複数にあると、電話でのサポートがとてもしづらいです。
「今取入になっているのに、ファンが動かない」という、電話があったときのことを考えてみたときに、今までと異なり、冬モードのことを「取入モード」と呼ぶことにしたら、それが、設定としての取入なのか、取入運転の作動表示ランプが点灯していることなのか、聞き出すことからスタートしなければなりません。「制御盤における取入は、左側と右側がありますが、今点灯させているのは、左側の取入のことですか?右側の取入のことですか?」というようにヒアリングを進めなければならなくなり、状況の把握がややこしくなるのです。
そこで、制御盤の盤面上に表示される名称は、それぞれ固有(ユニーク)なものをつけるという原則があり、今まで忠実に守ってきています。
それが、動作(取入運転・排気運転)と、設定(冬・春秋・夏)を、別の概念の言葉によって、明確に分けている第2の理由です。
3.過去使われていた制御盤の流れを継承しているため。
空気集熱ソーラーの制御盤は、そよ風だけに使用されるものではなく、実際には、OMソーラーの古い制御盤が故障している場合の交換品としての出荷をしています。その際、過去の制御盤のほとんどすべてが、夏冬の切り替えモードが備わっています。
具体的には、
扉開きタイプ(夏・冬)
大崎制御盤(夏。冬)
T型制御盤(季節モードとして、暖房・ソーラー・冷風)
DOM制御盤(夏・冬)
現在、これだけの制御盤の故障時の交換品としての出荷をしている際に、TC-10が使用されています。お施主様に、従来の使用感をなるべく継続してもらえるように、季節モード(冬モード・夏モード)をそのまま備えています。
「これまでも季節の替わり目に夏冬と切り替えてきましたが、同様の操作を行ってください」と言えるようにするためです。
季節ボタンが無いとどういうことになるのか?
いっそのこと、季節モード選択をやめて、春秋モードのみ、室温設定1本にしたらいいのではないかという意見があります。
私も2000年ごろにそのとおりに思って、そのような制御盤を作ったことがあります。TC-5です。
この制御盤には、季節モードのスイッチは搭載されていません。「室温設定で夏冬の切り替えすればいいです」ということでまさに加賀江さんの主張のとおりの機能を果たすように設計しました。
結果的には、「わかりにくい」と不評でした。それまでのOMの制御盤がすべて、季節モードを選択するようにできていたので、当時の工務店などがお施主様から、使い方の相談をされても、「どうしたらいいんだ?」と戸惑うことが多々ありました。
特に、「冬モードにするにはどうしたらいいの?」「室温設定を右に目一杯回してください」「夏モードにならないんだけど」「室温設定を左に目一杯回してください」といった変な感じに調整してもらうことが多々ありました。
また、薪ストーブなどで室温を高く上げすぎたりしている場合、冬の夜中に涼風取入が始まったり、排気運転が始まったりということも現象として現れるようになりました。
この経験を受けて、「季節スイッチ」はあったほうが良い。その方が、工務店などの導入する側がわかりやすいと考えています。
「過去のソーラーを知っている人にとっては、わかりにくい」ということなので、「新しく導入する施主には関係ない」という意見もあると思います。
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