住まい手の声02 ~お客さんが来ると、「ここ床暖房いれてるの?温かいね」って言われます。~

《そよ風》の家の住い手のインタビュー記事です。

 

住い手の声02 N邸  設計・施工 (有)羽根建築工房

第2回の今回は、大阪府大東市のNさんご一家のお宅です。
JR片町線の最寄り駅から歩いて10分、緑道沿いの日当たりのよい住宅地の一角にNさんご一家のお住まいがあります。
そこに、ご夫妻と二人のお子様の4人で暮らしておられます。
敷地は東西間口が広く、太陽の恵みをたっぷり享受できる素敵なロケーション、そこに板塀で囲まれたシックなたたずまいの家が目を引きます。



かき落とし仕上げの外壁と木製格子の醸し出す落ち着いた外観本日は、こちらのお住まいの設計と施工を担当された、(有)羽根建築工房の塩尻益生さんと一緒にお伺いさせていただきました。
リビングに入ると、テーブルの中央には、このお住まいの模型を用意してお待ちいただいてました。



さて、早速Nさんご夫妻にお話を伺ってみましょう。

 

この地にはいつからお住まいですか?
ご主人 私の父親の代からここに住んでいます。私の幼少期まではこの地に住んでいましたが、その後、祖父の介護のため郷里の長崎に戻り、私の親はそのまま長崎にとどまっています。
その後、私が大阪で就職し、結婚したことを機にこの地に再び住み始めました。1996年くらいからです。
お建て替えに至る経緯をお話しいただけますか。
ご主人 子供たちが生まれて手狭になったのが建て替えを考えるきっかけです。
実は、父が建てたもともとの家はプレキャストコンクリート造の住宅でした。当時のコンクリートの住宅は冬は寒いし夏は暑いというのを身にしみて感じていたので、木の家に住みたいと思っていました。
木の家がどういうものかをあまり知りませんでしたので、住宅展示場回りから始めました。しかし、どこも今一つな感じでした。きれいなのですけど、なんかピンとこないんです。そんな時、どこかの展示場で大黒柱のある家を見て、無垢の木っていいなぁ・・と思い始め、そんなことから、無垢の木で家を作ってくれる建築会社を探し始めました。
そこでたまたま見つけたのが、羽根建築工房さんのホームページでした。そのころ羽根さんのところで催し物があって、それじゃあ行ってみようということになりました。
それはどのような催し物でしたか。
塩尻さん 最初にお越しいただいたのは、墨付け刻みの見学会でした。大抵の方は完成見学会からお見えになるのですが、墨付けから来られる方はなかなかいません。(笑)
たまたまのタイミングでしょうけど・・・
ご主人 私は田舎にしばらく住んでいたものだから、大工さんの墨を打つ仕草など見慣れていたんです。そうしたら、ここでもちゃんとそうやっているじゃありませんか。正直、すごいなあと思っていました。
さらに羽根建築工房の社長さんが、家づくりの思いを語っておられるのを聞いて、とても共感し、こういった家を建ててみたいなぁ・・と思い始めていました。
奥様 もうそのころになったら、住んでいる古い家は限界でした。雨漏りはするし、ボイラーは壊れるしで・・この子たちが当時、赤ちゃんだったころ、お風呂に入っているときに、シャワーのお湯が、突然水になったりして・・。もうこの家も限界までよく住んだなぁ・・なんて当時は思いましたね。
墨付け刻みの見学会の次はどんな見学会に行かれましたか。
奥様 生駒の現場の構造見学会です。前回の墨付け刻みの見学会は、この現場のものでした。設計者の一見直人さんのお話も聞けましたね。
完成見学会は?
奥様 初めてのは、京都の方でしたね。外を黒く塗ってある家でした。大阪市内の神社の近くの物件も見せていただきました。その大阪の時から、具体的に相談に乗ってもらうことになりましたね。
吉野杉の磨き丸太による化粧小屋組みは羽根建築工房さんの得意技

 

最初の墨付け刻みの見学会から、このお住まいの着工までどのくらいの期間がありましたか?
塩尻さん 結構ありましたよ、2年位。
奥様 まだ見学会に行き始めたころは、建てるかどうか迷っていましたね。
ご主人 二人目の男の子が生まれた時に、これは建てなあかんと思いました。
前の家が手狭とのことでしたが。
塩尻さん 新しい家の吹き抜けを除いたら、延床面積は同じくらいです。ただし、東西間口はこの家より狭かったですね。
ご主人 前の住まいは部屋数は多かったのですが、一部屋一部屋が狭く、その結果使っていない部屋もあり、使いにくい間取りでしたね。昔、隣の家が売りに出た時、私の父が一軒隣の人と半分ずつ買い増しして、南の間口は広くなりましたが、当時はまだ駐車場にしてました。今回は建物の敷地に加えたので、南の間口も広がり、このように建てることが出来ました。
東西間口が広く、太陽の恵みをたっぷり集めることができる恵まれた敷地条件

 

羽根建築工房さんにお願いするに当たり、設計上はどのようなご要望を出されましたか。
塩尻さん 台所が離れているのはいやだとのご要望はありましたね。
奥様 前の家は台所と食堂は一緒でしたが、リビングが廊下を隔てたところにあり、孤立していたので。
ご主人 お客さんが来たら、家内が孤立してしまい、会話に参加できないと・・。あと、台所が北側にあり寒かったのでこれを解決して欲しかったですね。私の方は、基本、塩尻さんにお任せでしたけど。
洗面・脱衣の使い勝手ではどんなご要望がありましたか。
塩尻さん 帰ってきたときに手洗いとかうがいが出来るような場所が欲しいと・・。
ご主人 それをこの玄関土間に。子供らが男の子で活発なので、家に上がる前に、そこで一回汚れを落としてしまおうと、玄関土間に水回りを一つ、作ってもらいました。
このお住まい、玄関の土間が特徴ですね。
ご主人 はい、土間を広くしたいと要望しました。
奥様 あと、この住まいは床を高めにしてもらったので、玄関土間へのアプローチをスロープにしてもらいました。
ご主人 ここは、私が小学校3、4年生のころ、大東大水害というのがあり、建物が水に浸かってしまったのです。なので、基礎は高くして欲しいとは要望しました。
確かに庭の表土から見ると、大分上がっていますね。でも、南の掃き出しの外がデッキになっているので、高さを感じないで済みますね。
羽根建築工房さんのホームページでは、このお住まいのネーミングが「絵画を楽しむ家」となっていますが、どなたがネーミングされたのですか?
塩尻さん 私が付けました。
ご主人 家内は息子たちが生まれる前、ずっと絵を習っていました。
奥様 絵を習って、たくさん描いたのですが、前の家には飾るスペースがありませんでした。ただ物置のストックになるだけで・・。せっかく描いたのに飾れなくて、絵を飾れるところが欲しいとお伝えしました。
玄関、廊下には奥様の描かれた絵が飾られて、この家を訪れる人の心を和ませてくれる
この家にはさりげなく絵が飾られていますが、すべて奥様の作品なのですね。床の間の書の掛け軸も奥様の作品ですか。
奥様 書道も習っていました。今でも定期的にお手本を貰って、それを家で書いて提出してます。
和室の床の間にも奥様自筆の掛け軸が飾られている
ところで、このお住まいでご採用いただいている《そよ風》は羽根建築工房さんからのご提案だったのですか。
奥様 そうです。全く知りませんでした
ご主人 田舎の方では瓦屋根が主流なので、自分も瓦屋根ががっちりしていていいと思っていました。ですから、当初は瓦屋根を要望していました。あと、太陽光発電パネルは入れることになるだろうと思っていました。そうしたら、塩尻さんがこういうのがあると言ってくれて、強く推されて!(笑)
塩尻さん 金属板葺きで《そよ風》を入れるか、瓦屋根で行くか、最後まで悩んでおられましたね。
ご主人 瓦に最後までこだわっていたけど、最後は金属屋根もいいかなぁと思って、そちらに決めました。
《そよ風》について住まわれての感想を聞く前に、住む前の期待値というのでしょうか、そのあたりをお聞かせいただけますか。
ご主人 最初、どれくらい温(ぬく)くなるのかなぁ・・と、それが良く分からなかったんですよ。
奥様 冬、工事中に来た時に、今動いてますよって言ってもらって、《そよ風》の温風に手をかざしたらすごく温(ぬく)かったんですよ。
塩尻さん ダクトの途中で温風を出して、体感してもらったんですよ。
ご主人 それを見て、これは温いなって。
奥様 真冬に50℃以上の空気が取れて、室内にすごく暖かい空気が入っていたので・・。
ご主人 そこから、これはすごいなぁと思い始めて、冬、結構期待できるなぁなんて感じました。
実際、一冬過ごされてみていかがでしたか?
ご主人 温いですよ。逆に、太陽が出ていないと悔しいなぁ・・なんて思ったりして。前の住まいは寒いとき、7~8℃まで室温が下がりましたが、この家はどんなに寒い朝でも、13~14℃はキープしていましたね。お客さんが来ると、「ここ床暖房いれてるの?温かいね」って言われます。
普段、お日様が出ていない時は、リビングの壁掛けエアコンですか?
ご主人 エアコンも使いますが、今年一番の寒さなんていう日は、石油ストーブですかね。でも一冬で灯油の一斗缶一つで1シーズン足りましたね。
無垢のフローリングの上で横になって遊んでいるお子様たち。今は夏だが、冬もこうやって遊べるのが《そよ風》の住まい

 

夏はいかがですか?
ご主人 住む前は、金属屋根のせいで熱気がくるかと心配していましたが、屋根の熱気が室内には入って来ないんです。これにはびっくりしました。屋根に入れていただいた断熱材のおかげと思います。
前の住まいと比べるといかがですか。
ご主人 全く違います。家に入って来たとき、全くムッとしないんです。
奥様 涼しいくらいです。
ご主人 我が家は風がうまいこと抜けるので涼しいんですよね。この家は、窓を開けると涼しくて、エアコンをつけなくてもなんとか夏、凌げるんです。周りの家はもうエアコン全開なんですが、うちは結構エアコンを使わないで頑張れるんです。
そうですね、《そよ風》のお客様はわりと冷房に頼らない方が多いですよね。《そよ風》の涼風取入の方はいかがですか。
ご主人 普段、室温設定を高めにして、自分が外気を欲しいときだけ取入れしていました。手動で室温設定を変えて、ピッと。(笑)
《そよ風》のデータ閲覧ソフト《そよカルク》のデータを拝見すると、夏の室温設定が30℃だったので、首をかしげていたのですが、今のお話で謎が解けました。
ご主人 外の湿度が高いときは外気を入れたくなかったので、敢えて手動でそのようにしてました。
《そよ風》の微妙なタッチまで手動でコントロールしておられたのですね。
ご主人 ぼくは夏場、よく温度設定のところを触ります。この夏は結構さわりました。外の空気が涼しい日は室温設定を25℃くらいに下げて、積極的に涼風取入をしましたね。自分の好みに応じて取入、排気ができるマニュアル運転があったら使いますね。秋口に今だけちょっと暖めたいときは、春秋モードにして設定温度を何度にするというようなマニュアル操作をしてますけどね。

 

深い軒と広葉樹が夏の日差しを遮り、心地よい日陰を作っている。夏の日射遮蔽のお手本のような造り

 

《そよカルク》を積極的に使っておられますよね。
ご主人 そう、あれ結構見てる。定期的にアップロードしてますよ。
私もこちらにおじゃまする前に見させていただきました。
ご主人 猛暑だった昨年の夏、四万十で日本最高記録を更新しましたよね。ちょうどそのころ家内の実家に帰省していてそのあたりにいました。大阪でも猛暑のようでしたので、帰宅してから、その時の室温が何度になっていたかなど、《そよカルク》の室温データでチェックしてみたりしてました。
そんなふうにもお使いなんですね。《そよ風》と《そよカルク》を使いこなしていただいてますね。
塩尻さん 操作方法とか、何も説明してないですから。(笑)
えー!
塩尻さん 夏と冬の切替はしてくださいねぐらいしか。(笑)
ご主人のように使いこなしていただけると、こちらも本望です。確かに大昔のソーラーはマニュアル操作に近いんですよ。
ご主人 それだと世の奥様方は使えないだろうなぁ・・という思いはあります。
塩尻さん そうなんですよ。基本的にはよく解っていない人でも使いやすいように、自動運転になっています。季節モードさえ切り替えておけば勝手に動いてくれるようになってます。
その通りです。どうしても万人向けに作っておく必要がありますので。ところで、冬の乾燥対策はどうですか。
ご主人 結構乾燥しますね。湿度は30~40%くらいです。
そうですね、乾燥した外気をさらに屋根で暖めて入れてくるので、相対湿度は下がりますね。寝室などに加湿器を入れてる方も多いようですが。
奥様 うちもそうしてます。リビングに大きいのを一つと、寝室に一つの二か所です。
これから家を建てる人に何か一言いただけませんか。
ご主人 自分の好みを押し付ける訳じゃないけど、私は結構出張が多くて、都会の家と、田舎の家を見る機会が多いんです。田舎に行くと、しっかりした家が多いんですよね。一方、都会では建材のボードを壁に貼っただけの家が多いんです。都会の家っていうのは出来あがったときはきれいなんですけど、ちょっと年数が経つと褪せたような感じになってしまいます。一方、木の家は古くなればなるほど味わいがでます。都会の家にはその味わいがないんですよね。そういったところを含めて、よく見て建てた方がいいんじゃないでしょうかね。一瞬の新しさだけを見るのではなく、年数が経つことにより味わい深さが出るのは、工業製品ではなかなかできないですね。
このお住まいなら五十年後も楽しみですものね。本日はありがとうございました。

 
 
 

インタビューのあと、家の中を撮影して回りましたが、お子様のお部屋の壁に、二人のお子様に向けた奥様の励ましの言葉が、毛筆の書で、しかもアンパンマンの挿絵つきで飾られていました。親御さんのお子様に対する思いにジーンとしてしまいました。N様ありがとうございました。