住まい手の声03 静岡県浜松市 N邸

《そよ風》の家の住い手のインタビュー記事です。

 

住い手の声03 N邸  設計 (有)村松篤設計事務所 施工 (株)水崎建築

第3回は静岡県浜松市のNさんご一家のお宅を訪問しました。

 

Nさん宅は三方原の北部、天竜浜名湖線の都田駅から2.5㎞程の閑静な住宅団地の一画に位置します。
こちらに、ご夫妻と小学生のお嬢様の3人で暮らしておられます。
今回は、こちらの住まいを設計された建築家、村松篤さんと一緒にNさん宅にお邪魔しました。
玄関アプローチはスロープになっており、玄関前の自転車置き場までスムーズに出入りできるように動線が確保されています。
玄関前に止めた自転車も道路から見えないように配慮され、設計者である村松さんの心くばりが伝わってきます。
さてそれではご夫妻にお話しを伺ってみることにいたしましょう。

スロープのある玄関アプローチ
自転車が道行く人から見えない心配り

 

本日はよろしくお願いします。まず、今回のお住まいの話を伺う前に、以前のお住まいについてお尋ねします。
ご主人 この家からもう一つ北側の区画のアパートに住んでいました。
今回のお住まいを建てることに至った経緯をお聞かせください。
ご主人 私の実家は伊豆ですが、この浜松の地に定着して仕事をやっていくことが見えてきたので、借家で家賃を払うより買った方が良かろうと考えてのことです。
この土地は購入されたとのことですが、村松さんと知り合うのと土地購入ではどっちが先でしたか。
ご主人 土地購入が先でした。
奥様 東日本大震災のあった年の暮れだったと思います。
ご夫妻の笑顔が絶えない取材風景
村松さんに設計をお願いすることに至った経緯をお話し願えますか。
ご主人 最初はハウスメーカーを回っていたのですが、ある時、自分の職場の先輩から家づくりのことを聞く機会がありました。
その方は自分の家に100%満足していて、旅行に行くと自分の家の方が居心地が良くて、すぐ帰りたくなるなんて言ってる程でした。
その先輩が刈谷に住んでいるんですけど、その方から自分の家を建てた愛知県の工務店を紹介していただいたのですが、浜松には来れないということで、村松さんを紹介してくれました。
村松さんとその工務店さんのご関係は?
村松さん 名古屋市内の工務店さんなのですが、以前その工務店さんのご紹介で住宅を設計しまして、それで知り合いました。
村松さんを訪ねられたのはいつごろでしょうか?
ご主人 震災の翌年、2012年の1月にコンタクトを取らせていただきました。
村松さんにご自宅の設計をお願いするにあたり、どのような要望を出されたのですか。
ご主人 とにかく丈夫な家をと申し上げ、耐震等級3※を達成して欲しいと申しました。
(※耐震等級3は住宅性能表示基準の最高ランク)
この時村松さんから、コンクリート造や鉄骨造だから丈夫ということではなく、地盤との調和が大切なんだと教わりました。
なるほど、そうですよね。ところで、地盤のことをお聞きしますが、ここはいわば台地のようなところで、地盤は良好かとお見受けしましたが。
村松さん そう、三方原あたりからここは台地になっているのですが、さらに北に行くとまた下がるんですよ。
じゃ、ここは一番標高が高い、いいところなんですね。
村松さん いや、それが、そういう予定だったのですが…最初にSS試験※(※スウェーデン式貫入試験・比較的簡易な地盤調査試験)をやりましたら、ちょっと危ういデータが出たので、更にボーリングによる地質調査を行いました。
ご主人 そう、2ヶ所行いましたね。
村松さん そうしたらこの場所が、山から谷に切り替わる場所だということが分かりました。
この敷地の中で土質が変わっているのです。
で、地盤改良だったのですね。
村松さん この場所では、表層改良にしました。でも、それなりの深さまで地盤を改良しました。
奥様 このあたりなら大丈夫と思っていたので…
ご主人 そりゃあショックでした。でも、地盤でベストな処置をやっていただいたので、安心して暮らすことができてます。
今回は建築家の村松篤さん(左)にも大いに語っていただきました
他にどのような要望を出されましたか。
ご主人 要望というか…前の家で結露に悩まされましたから、それは伝えましたね。
ここに住む前に2件のアパートを住み継いだのですが、特に最初の鉄骨造の建物(5階建ての2階に居住)は結露がひどかったです。
奥様 角部屋だったのですが、お部屋の壁にカビが生えるぐらいでした。
お掃除が追いつかないほどで、毎日、カビの胞子を吸っているんだなぁ…と思いながら暮らしていました。
玄関のスチール製建て具も結露がひどく、扉を開けると水滴がボタボタ落ちてくるんです。
建物のテイストについては何かご要望を言われましたか?
ご主人 和風の家は、私は好みなのですが、妻はそうでもないのです。
最初に村松さんに見せていただいた山東庵は和のテイストが強かったのですが、次に見せていただいた浮遊間はとてもモダンな家でした。
村松さんに頼めば、自分達に合ったものを提案していただけると感じました。
ちなみにこのお住まいには畳敷きの部屋はあるのですか?
ご主人 はい、2階に!。
村松さん もちろん、ご主人のスペースです(笑)
和のテイストが好きなご主人の2階書斎コーナー

 

ところで、《そよ風》は以前からご存じでしたか?
ご主人 知りませんでした。村松さんからご提案いただきました。
村松さん ご覧いただいた山東庵も浮遊間も、そして我が家も空気集熱のソーラーが入っているんです。
それによる心地よさや、暮らしぶりが変わり、オープンな造りの家にもってこいだという話をさせてもらいました。
そのあたりに共鳴いただけて導入していただいたのですね。このお住まいを建てるにあたって、どのような暮らし方を期待しておられましたか。
ご主人 前のアパートは部屋が細かく仕切られていましたから、今度の家は、リビングを中心とした開放的な暮らしを望みました。
村松さんとしては、どのように設計に入られたのですか。
村松さん 所要室ということはもちろん受け止めるのですが、土地との関係でいうと、この敷地の南側は平屋が建っているのですが、結構立ちが高い平屋なんです。
で、いずれか分かりませんが、建て替えをされた時、2階建てになることも考えておく必要があります。
この敷地は60坪なんですけど、それほど南側に余裕があるわけではありません。
吹き抜けを介して上から光を取り込まないとまずいだろうと設計を進める上で感じました。
で、吹き抜けを作るとなると、《そよ風》を導入することで、いろんな意味でうまく解決していくのです。
ですが、吹き抜けがありながら耐震等級3を目指すことが必要で、構造上、そこは苦労しました。
ただ、お陰様で、この吹き抜けを介して四方で水平構面が取れるような設計を、構造家の方と相談しながら進め、このような造りとなりました
吹き抜けを介し陽光溢れるリビング

 

村松さんから最初のプレゼンを受けた時の印象をお話しいただけますか。
ご主人 「わっこれはいい!」って感動しましたね。
奥様 ええそうです。
もう最初から現在の建物の原型でしたか。
ご主人 はい、そうです。
村松さん 最初のプレゼンからほとんど変えてないですね。
奥様 自分達で考えても所詮、素人ですので、お任せしようというのは、ふたりで決めていました。
ですから、間取りは全く悩まなかったですね。
ご主人 ええ、最初のプレゼンの前に、頻繁に村松さんと打合せしてましたから。何気なく言っていたことが取り入れられていて、結構感動しましたね。
最初のプレゼンの話の中で、村松さんとして補足することはありませんか。
村松さん 日照や通風、断熱、ソーラーとか吹き抜けを入れながら耐震等級3を満たそうとかという要素の他に、もう一つ「家相」という要素があったんですよ。
あー、村松さんのホームページで、このお住まいの記事のところに書かれていましたね。
村松さん 一般的に、辰巳(タツミ)、戌亥(イヌイ)を張って、で、玄関もその方向になっていくと、もうこういう形状だろうという答えが解っていくんです。
家相はお二人の要望ですか、それともご実家の親御さんの意向ですか。
奥様 私達の要望です、って言うか、あまりこの分野に詳しい訳ではないんですけど、後から、こっちの方向にこれがあったから凶だよって知るのも…その程度なんですけど、何かあった時にやはりこっちの方角にこれを作ったからなんて思いたくなかったので。
ご主人 何かの原因を家に持って行きたくなかったんです。
マイナスの要因にならないようにしたかったということですね。それでは、ここで、《そよ風》の家の住み心地について、お話を伺います。
ご主人 冬がとにかく暖かいということに感動しました。陽が出ていたらエアコンをつけずに過ごせるというのがうれしいです。
奥様 すごく寒い時期でも朝1時間エアコンをつけて、で後は太陽が出てくるので暖かくて、夕方も1時間くらいつければ暖かいですね。
オール電化にしたのはこの住まいからですが、アパートにいたころより今の方が電気代が安いんです。
電気代は高くても1万2千円どまり。お風呂も台所も入れてです。
こちらのお住まいには《そよ風2》が入っていますが、 装置が場所を取らないのでロフトも広々
台所はIHなのですね。
奥様 いいえ、IHでなくラジエントです。
電磁波の出ないタイプですね。
村松さん そして給湯はエコキュート。
奥様 以前のアパートでは1万2~3千円の電気代に、さらにガス代が加わって、おまけに快適でなかった。当時の冬は、エアコンつけて、ホットカーペットをつけて、それでも寒かったです。
あの~、前の家ではコタツを使っていたんですか。
ご主人 あ、もう当然のように。必須です!
奥様 ホットカーペットの上にコタツでした。
村松さん それは私も打合せで経験していますから(笑)でも、それでも寒かったですね。
電気代の話が出てきたのでもう少し話をさせていただくと、この家は長期優良住宅として設計しているので省エネ等級も4なんです。
窓ガラスはLowEを使い、断熱材はウッドファイバーを、壁120㎜、屋根240㎜なんです。先ほどロフトの天井に手をあててみたのですが、築12年の我が家は断熱層が薄いので、屋根の熱が手に伝わりますが、この家はほとんど熱くないです。(取材時期8月)
冬に少しだけエアコンをかけても効きが良いのはその効果だと思います。
木の香漂う2階のホールは奥様お気に入りの場所
室内の空気の質感とでも言いましょうか、そういったことについて考えたことってありましたか。
ご主人 いいえ、村松さんにこのシステムを勧めてもらうまで考えてもみませんでした。
村松さん ぼくは空気集熱の家に住んで12年になるのですが、暮らしの中で日々体感していることを、なかなかうまい言葉で表現できないのですが、とにかく『冬の暮らしが激変』するのです。
その辺のところを体感していただいているのではと思うのですが。
『激変』というところをもう少し解説していただけると。
村松さん そうですね。我が家の場合はもう、すべての建て具が開けっ放しになっています。
極端に言うとトイレの建具も閉めたことがないくらいで。家の中どこへ行くにも不自由さがないのです。
それがいつも同じだというのが暮らしていて解るのです。
毛布は使わないとか、夜中トイレに行く時もそのままバッと起きていけるとか、そういうのは暮らしていないと解らないことですが、それが嘘でなく正直に言えるのです。
あと、なんというか、床が暖かいとかいう感じじゃないんです。何か空間全体がマイルドになっているんですよね。
奥様 ああ…そうですね。マイルドって表現がピンと来ますね。
空気の流れを感じるこの家にはモビールが良く似合う
村松さん でもそれ、暮さないと解らないんですよね。何かうまい表現があるといいのですが…それと、空気がよどんでない
ので、常に何かまわっているぞ!みたいな感覚があります。
奥様 この夏、旅行で6日間家を空けたのですが、旅行に行く前はアパート時代も今もゴミを全部処分して排水口もきれいにして行くんですが、アパートの時は帰ってくるとモアッて臭うんですね。
ご主人 何かこもった臭いなんです。
奥様 だけど、今回全くしなくって…この家は留守の間も空気が循環しているんだなって感じがしますね。
ご主人 《そよ風》のファンが回っているのが大きいのですね。
そうですね、《そよ風》って換気量が多いので。冬の晴天時だと、日中、1時間当たり最大で600m3の換気量があります。夏の日中、締め切っていても200m3くらいあるので、1日に何回も家の中の空気が新鮮な外気に入れ替わっている計算になるんです。
奥様 えーそんなに。
ご主人 なるほど、合点がいきますね。
さあ、それでは家の中をご案内いただけますでしょうか。
深い軒の出とバルコニーの張り出しが夏の強い日差しを遮り、冬の陽光を室内に招き入れるパッシブデザインのお手本とも言える南側外観
上品なしつらえの手洗いコーナー
玄関やキッチンにはご夫妻のご友人の作家さんの手による素敵な照明器具が…
仲睦まじいご夫妻のツーショット

編集後記
今回の取材訪問では、ご夫妻の柔和なお人柄が醸し出す、素敵な暮らしぶりを垣間見ることができました。
また、奥様がお嬢様のために造られたままごと遊びのキッチンセットには親御さんのお子様への愛情を深く感じさせていただきました。ありがとうございました。

奥様がお嬢様のために拵えたままごと遊びのキッチンセット