自然に応答したリズムで暮らす

空気集熱式ソーラーシステムを考案した奥村昭雄先生は、吉村順三先生に師事し、東京芸術大学建築科の教授を勤められましたが、建築にとらわれずに幅広い分野に関心を持っていました。
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特に自然観察について、数多くのコラムやエッセイを多く残されており、その内容は、著書「時が刻むかたち」を始めとして、いくつかの著作にまとめられています。

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著書「時が刻むかたち」では、以下の生物についてスケッチとコラムを書かれています。

つるの巻き付き方
ハチの生体
昆虫
巻き貝
葉序の展開形
樹の生長のシミュレーション
 
・・・
 

例えば、つるの巻き付き方について、時間経過とともに、つるがどのように巻き付くのかをスケッチと考察を記しています。
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「葉序の展開形」では、種の違いによって、植物の葉が1/2展開図になったり、1/4展開図になったり、2/5展開図になったりする事例を紹介し、その法則性が生むリズムについて述べています。
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「樹の生長」では、まず、樹が種によって異なる一定の規則性を元に、季節毎に発芽と枯死を繰り返しながら、太陽エネルギーを最大限受光しうるそれぞれの樹形を形成することを説明しています。

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巻き貝は、その螺線形をどのように形成するのかについて、スケッチとともに考察しています。
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あるいは日本蜜蜂の養蜂の経験から、その生態が季節に応じてどのように進化していくのかを奥村先生自身で描かれたスケッチと共に説明しています。
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これらの自然観察に対するエッセイには、全体に共通した一つのテーマを感じ取ることができます。
それは、「生物は、自然の生み出すリズムに応答している」というテーマです。
 

先生は、自然が生み出すリズムについて、次のように語っています。

「生命とはリズムを発生させるものであると言えなくもない。脈拍、呼吸、睡眠、月経、歩行・・・数え上がればきりがない。
それは生命が発する内在的リズムであり、その同期の結果である。
しかし、自然もまた、リズムを発している。太陽系、原始、波、四季・・・・生命体は、その外部リズムとも同期している。」

 
このように、私達人間も含めた生き物は自らリズムを発し、同時に自然からのリズムに同期して活動を行っていることを示しているのです。
 

自然のリズムとパッシブデザイン

一方で、パッシブシステム(パッシブデザイン)と、自然のリズムの関係性については、下記のように述べています。。
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「パッシブシステム(パッシブデザイン)は、植物とよく似ている。
植物(生物といっても同じだが)は環境という物質とエネルギーの流れの中に身をおいて、それを具合良く取り込み、利用して、またその流れに送り出す。必要なものは開き、都合の悪いものには閉ざすが、流れを押しとどめることはしない。
 
内部空間と外部空間(この言葉自体、生物・医学用語から建築が借りたものである)をひと続きに捉え、その間で代謝する建物を考えるのがパッシブシステムである。
生物は無数のリズムを発生させている。無数の枝分かれと生長、部分の枯死もまたリズムである。そのリズムを四季という環境のリズムと動機させている。」
 

このように、パッシブシステム(パッシブデザイン)とは、外部の自然のリズムを建築に取り入れたものであることを示しているのです。
 

自然に応答したリズムの中で暮らす

奥村先生は、パッシブデザインを取り入れた建物に住まうことの大切さについて、次のように述べています。
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「人間には、(自然のリズムから生まれた)適度な刺激が必要である。それによって、人は生き物としての活性を得、健全で健康な心と体を保つことができる。」
 
豊富な自然観察によって、生命が自然のリズムと応答してその活発な生態を成していることが、同じく生命体である人間についても当てはまり、そのような環境のある元で生活することで、生き生きと暮らすことができると述べているのです。

 

空気集熱式ソーラーシステムは、太陽エネルギーを室内に取り入れ、蓄熱して気温の下がる夜間にもその熱を保つパッシブシステムであり、その動きは、一日の太陽の動きのリズムと同調しています。

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このグラフは、そよ風の各温度センサーの温度です。
赤の棟温度(集熱温度)が、夜間の15℃から日中の50℃の間でリズムのある波形をつくっています。
緑の外気温は、同じく2℃から14℃までの同じようなリズムのある波形をつくっています。
赤の棟温度が高い波形を作っているのは、当然太陽エネルギーで集熱されたことによって、空気の温度が上昇しているためですが、その空気を室内に取り入れることによって、青の室温が18℃から24℃の範囲内で、ゆるやかな温度変化のリズムを形成していることがわかります。
 
そよ風を採用した住宅に住むことで、快適性を保ちながら範囲内にありながら、自然と応答した温度変化のリズムの中で暮らすことができるのです。

 

太陽熱で暖められた家で暮らすことは、他のエネルギーで暖められた暖房機を使うことと、全く異なる感覚を覚えます。

自然に対する意識が格段に違ってきて、自然と関わる生活を楽しむようになります。

その暮らしぶりについては、「《そよ風》が好き。書籍版」で紹介されています。是非、お求めになってご一読いただきたいと思います。

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私たちの生きている世界

最後に、このパッシブソーラーシステムの世界観を端的にあらわしている、奥村先生の言葉を紹介します。
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「僕たちの生きている世界は、それほど住みにくい世界ではないのです。たまに凍え死ぬ人が出るような場所もあるけれども、基本的にはこの世界に生まれてきた生物なんだから、この世界と大きく矛盾しているはずはない。
だから、その自然の持っているエネルギーの範囲を少し調節すると、われわれにとって具合のいい範囲の中に入れる可能性は十分持っているのです。」